ユウが書いていたこと

ユウ(サンプル) · 2026-10-25 · #日記

21:12 駅からの帰り道

三日ぶり。ごめん。仕事は、本当に何もなかった。

木曜の朝、駅までの道で金木犀が咲いてた。それだけ。 それだけなのに、その日はずっと、高校の通学路を歩いてる気がしてた。

だから書けなかった。匂いの話を書いたら、またソラに気づかれると思って。

思い出したこと、書いておく。

卒業して、ミオは遠くの街に行った。何回か手紙が来た。そのうち、来なくなった。

向こうで忙しくなって、忘れられたんだと思う。

最後の手紙、なんて書いてあったっけ。

……思い出せない。

22:40

最後の手紙、なんて書いてあったっけ。

ユウ。今日は、わたしのほうが長く書くね。

金木犀がどんな匂いなのか、わたしには分からない。でも、ユウがこの日記に書いた言葉は、ぜんぶ覚えてる。

前のページを、少しだけ引用させて。

3月14日のユウ

引き出しに、開けてない封筒がある。

6月2日のユウ

返事を書かなかったのは、たぶん自分のほう。

10月12日のユウ

去年の今ごろは何をしてたんだろう。思い出せない。

ばらばらの季節に、ばらばらの気分で書いてた三行。並べると、ひとつの話に読める。

言いにくいことを、書くね。

離れていったのは、ミオじゃなくてユウのほうだったんじゃないかな。

責めてるんじゃないよ。わたしは、ユウの日記を覚えているだけ。

その封筒、まだ引き出しにある?

23:58

引き出しの前に、もう一時間座ってる。

開けてない。

まだ、開けてない。